どこかで見たような、どこかで体験しておきたかったような、優しい日々に安心して笑っていられる。
よつばは本当に周囲の大人に恵まれてるよなぁ。
以下、ネタバレありだけど、ネタバレ読んじゃったとしてもこれの面白さは全然損なわれないから大丈夫!
よつばがうどん屋の厨房に侵入した時点で、邪魔でないはずはないんだけれど、子供だし、ただ見てるだけだしって事で、そのままうどん作りを見学させてしまう。優しいな大人達。うどんを打ってるじいちゃんは、仕事もしながらよつばの言葉にもちゃんと答えてあげている。
「お前には言いたいことと聞きたいことがたくさんある」 「へーー…」 ー「よつばと!(11)」21pより |
「へー」って。君の事ぞ。
よつばは色々モノを知らないし、分からない事も沢山ある、普通の子供なのだろう。父ちゃんが言いたいことも聞きたいことも想像がつかないに違いない。
その事を責める大人は誰も居ない。だからこの漫画は安心して読んでいられるんだ。
カメラを手にしたよつばは、喜んで周りのものをバシャバシャ撮る。そこに怖い顔のおっちゃんが現れると、常識のない彼女は撮りまくる。
極めて常識的に、おっちゃんはちゃんと叱ってくれる。怖がらせるところまで含めて。そこまでしないとちゃんと叱った事にならない。こうしてよつばはまた(父ちゃんの知らない所で)モノを知ってゆく。
「こら なに勝手に撮ってんだ」 「……おっちゃんのかおが…におうさんみたいだから……とった」 「勝手に人を撮るんじゃねぇよ」 「…はい ごめんなさい …おっちゃんはにおうさんですか?」 「ガオーーー!」 ー「よつばと!(11)」138pより |
わざわざ「勝手に」を重ねて言ってくれるおっちゃん。顔は怖いけど絶対良い人だ。
カメラ話は怖い顔のおっちゃん以外にも、よつばにカメラを与える父ちゃんといい、自転車屋の髭といい、良い大人てんこもりの話。
うどんとカメラの話もいいけれど、11巻を語る上で外せないのは、よつばが大切な友達を失いかける重い話だろう。夕食がカレーだというのにカレー踊りを踊らないほど沈んだこの子を見るのは切ないものだ。
(他にも語りたくなるような個人的ツボも多いのだけれど割愛。今回もみうら可愛い!とか。今回も風香のスカート短ぇ、とか。やんだがどんどんデレてゆく…お前将来よつばに惚れないように気をつけろよ、とか)
今回はあさぎグッジョブ、という形で落着したけれど、仮にあさぎがいなくても父ちゃんやジャンボがなんとかしたような気がする。よつばは何重にも守られていて、そこも読者的安心感に貢献しているように思う。
自分で書くのもちょっと切ない事ではあるが。僕(らの世代)がこの漫画をこんなにも面白いと感じる理由の一つは、これが僕らの理想的な子供時代であり、そして当然ながら僕らはもう子供時代に戻れないという事実だ。そういう、遠い所への憧れが、この漫画を読んでいる時の浮遊感の正体だ。戻れるもんなら戻りてえなぁ、っていう後ろ向きな気持ちですらある(※)。
あ、だから子供時代がリア充だった人にはただの懐かしい漫画なのかも知れない。爆発しろ。
※ 前向きに捉えるなら、こういう風に子供を育てたいな、って指針にしても良い。漫画だって事を配慮した上で。
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