2012/02/25

書籍紹介)閉じこもるインターネット/イーライ・パリサー(井口耕二 訳)

最近のインターネットは、利用者の目に見えづらい裏側で色々と仕組まれています。その現況を調査し解説してくれる一冊。

原題:Filter Bubble :What the Internet Is Hiding from You

本書はかなり内容が濃いので、僕なんぞがガチでレビューを書こうとすると1週間じゃ足りないかも。早くも挫けそうですが、先ずは本書の基本的なアイデアだけでも紹介しておきたいと思います。
原題にもなっている、フィルター・バブルとは何か?これは既にあなたをも包み込んでいるかも知れませんが、気づいていますか?

フィルターとネット

ここでいうフィルターとは、情報の伝達を妨げる様々な壁のことです。悪い例ばかり挙げると以下のような感じ。
  • A新聞社の社員が起こした不祥事はA新聞の紙面では扱いが小さい
  • テレビ番組はスポンサーの悪口を言わない
(マスメディアだけがフィルタというわけではありませんが)

インターネットが登場した頃には、ネットがこうしたフィルターを取り払い、誰もが公平に情報にアクセスできるようになると期待されていました。現にそうした良い成果もないわけではありません。

ところが現在のインターネットには、逆に利用者間の差を拡大するようなフィルターが存在します。

あなた向けの専用フィルター

インターネットをレストランに喩えてみます。あなたはレストランのお客です。

このレストランは世界中と繋がっていて、膨大な量のメニューがあります。それを歓迎するお客も居ましたが、多過ぎて選ぶのが大変だと感じる向きもありました。
そこでレストランは、お客の好みを記録し始めました。それによって「お客様の好きな料理を出そう」というわけです。

あなたがこれまで肉料理を多く頼んできたとしましょう。レストラン側ではあなたを肉好きのお客として記録しています。
お店はあなたに、肉好き客向け専用のメニューを見せます。そこには、あなたが好むであろう肉料理がでかでかと並んでいます。その他の沢山のメニューはそこには載っていません。あなた向けの専用フィルターです。

フィルター・バブル

GoogleやFacebookは、あなたがあなた好みの情報にアクセスし易くなり、あなたが好まない情報にはアクセスし辛くなる専用フィルタを仕掛けています。が、その存在を積極的に利用者に知らせる事はしません。知らなきゃ知らないままです。
そういう意味で、このフィルターはとても目に見えにくいというのがポイントその1。

レストランの喩えでみた通り、このフィルターは利用者個人ごとに違うものが存在します。これにより、かつては「誰もが同じインターネットに繋いでいた」のが、「人によって違うインターネットに繋いでいる」に近くなってきています。
つまりこのフィルターは、情報と利用者の間を隔てているだけでなく、利用者と利用者の間も隔ててバラバラにしてしまっているというのがポイントその2。

目に見えづらい透明なフィルターが、無数の利用者をバラバラに包み込んでいる様子を、泡に喩えてフィルター・バブルと表現しているわけです。

どうしてこうなった

このような専用メニューを見せる理由について、レストラン側は「お客様の好きな料理を出す為、お客様の便利の為」と説明します。

しかしそれは表向きの話。人は自分の好きなモノを目の前にしている時の方が気分が良くなり、より多くのカネを使う傾向がある(心理学の実験でも確かめられているそう)からです。
そう、彼らの目的は利用者の財布の紐を緩める事です。そしてあなたが買ったものはまた彼らに記録され、よりあなた好みのフィルターになってゆくのです。

フィルター・バブルが起こす問題

引き続きレストランの喩えが分かりやすいでしょうか。
このレストラン、肉料理が儲かると思ったら肉料理しか出さないのですよ。あなたの財布に興味があっても、あなたの健康には興味がないので。

より大きな、より深刻な問題もありますが、こちらは長くなるのでまたの機会に。ご興味をお持ちの方は買って読んだ方が早いですよ。冒頭にも書きましたが、ガチレビューは先の話になりそうですから。

挫けそう

読みながら重要っぽい点をドッグイヤーしていった結果がこちらとなります。

折り過ぎ。

4 件のコメント:

  1. この問題は、20年くらい前にSF小説で出てきてネットで議論した記憶があります。
    そのSFでは閉じこもる権利が法的に保証されていて、外部からフィルターバブルに、いわば孔を開ける行為が違法化されているという……

    返信削除
  2. コメントありがとうございます。
    確かにこの状況、一昔前ならSFとしか思えないですよね。
    しかも閉じこもってる方が本人的には楽しく過ごせるんで、
    法的にはともかく閉じこもるのは自由ってのは事実だという。

    返信削除
  3. 実感として感じますね、怖いですね。

    匿名さんのおっしゃるSF、何てものなのか、気になります。

    返信削除
  4. コメントありがとうございます。
    ちょろっと探してはみたんですが、件のSFのタイトルを特定するのは
    無理でした><
    フィクションなら良かったんですけどねー、現実なんですよね。

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