3件の殺人事件が起きた。いずれの現場にも似たような暗号が残されていた事から、連続殺人事件として捜査が進められる。暗号を解いた結果、それぞれ次の犯行の場所を示している事が分かった。そして3件目の暗号で予告された次の現場は、高級ホテル。
4件目の凶行を防ぐ為、そして犯人確保の為、数名の刑事がホテルマンに扮して犯人を待ち構える。刑事として全てを疑う目線とは真逆の、ホテルマンの目線に立った時、誰もが犯意なく被っている嘘の仮面が浮き彫りになる。
以下、ネタバレあり。
東野さんの本はそれなりに好んで読んでいる。同様の人なら承知していると思うけど、ミステリとして、パズル的な読み方をすると物足りない。トリックは途中で解き明かされてしまうし、犯人の頭が物凄く良いわけでもない(※)。
そういう読み方で楽しむものではない。東野さんの話はいつだって人の情の機微を描くものだと思う。
連続殺人の縦糸があって、それとは一見無関係に見える横糸が複数展開していく。それらは主に「ホテルに来る奇妙な客・困った客」という形で紹介され、殆どの場合そういう客は嘘をついている。
客が何らかの目的の為につく嘘のエピソードは、エグい。そう感じた。
例えば、ホテル側は宿泊客の名前や部屋番号は絶対に他言してはならない。対して何らかの事情がある客は、あの手この手でホテルから特定人物の部屋番号を聞き出そうとする。その方法がリアル過ぎてエグい。この内どれかは成功しちゃうんじゃないか、悪用されちゃうんじゃないかとヒヤヒヤする(実際にはホテルが上手くかわす方法があるのだろう)。
作中では幾つかの例が紹介されつつ、一件だけ成功してしまっている方法がある。これ、実際ホテルでやったらどうなるんだろう。。。
こんな事を考えてしまうのは、とにかくホテルの内側に関する描写がリアルだからだ。凄く取材して書いてるなぁ、と感じさせられる。当たり前の事かも知れないけれど。
実際どうなるんだろう、と言えば真犯人=x4の動機の部分について。
ホテルの人間が嘘をついたせいで流産した。深刻な心理的ダメージを負った。担当者を殺してやろうという気持ちも不思議ではないが、ホテルを訴えるという展開も考えられる。
仮にその展開になったとしたら、ホテル側は裁判まで行ってしまったら風評的に負けのようなものだから、訴えを起こさせずに示談等にまとめるのだろう。
「お客様がルールブック」という理念に加えて、訴えられたら負けという力関係にある事。ホテルってのは本当に大変な仕事だ。多くの客がホテルに対して攻撃的であれば、もう立ち行かなくなる。客の協力あっての空間というわけだ。
こんないいホテルに泊まる機会は無いけれど、もしもの時には良きルールブックでありたい。
※ 策を弄し過ぎとしか言えない。普通に二人を殺しても線は繋がらなかっただろう。むしろ殺害方法から身元が割れる事を心配した方が良かっただろう。
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