2013/04/06

漫画感想)もやしもん(12)/石川雅之

大人と子供ってなんなのよ、とか。
子ども扱いしないでよ、とか。
何をどうすれば大人と認めてくれんのよ、とか。
そういうコンプレックスは人の成長の過程で必ずあって、大体中高生ぐらいの年齢にピークを迎えるのが現代社会においては一般的なのかな、と思います。

かと言って成人すれば解放されるのかというとそうでもなく、
社歴が短い、だの
海外を知らないくせに、だの
子供を産んだこともないくせに、だの
なんだかんだと理由にされて先達から頭ごなしに上から目線のお言葉を拝聴する機会はごまんとありますね。

僕個人は悪運強く(?)最近はそういう機会が無かったんですが、この漫画を読んで顔から火が出るような思いでした。
色々揺さぶられて困っちゃう。もやしもん12巻のご紹介です。


以下ネタバレなしアラスジ紹介ありって感じ。


ミス農大落とし編から登場したニューヒロイン、西野円は高校生。農大入学後は樹ゼミに入る予定になっている、忠保達の後輩です。

ムカツくことがあると走って逃げたり、悪いと思ったら畳みに額付いて謝ったり、そうかと思うとまたムカツいて先輩に向かって「バッカじゃねぇの」と怒鳴ったり…なんというか、感情表現がストレートな娘です。

↑に挙げた通常版の表紙で疾走する西野はぽかんとした顔で、一つ事しか頭にない感じ。これは西野のキャラクターを良く表していると思います。
↓は限定版の表紙です。うーん、こっちも綺麗だけど僕は通常版の方が好きかな。


で、この娘が中心になって巻き起こす大人と子供旋風。

メンバーの中では(メンバーじゃないけど)一番大人っぽいアヤさんから見ても、


「大人ってのは常にあたしからは遠いんだよ」

喩えるなら緑色の赤ん坊アキレスと亀のように、近づいても近づいても遠ざかっていってしまう。じゃあ自分より年上の人は大人なのか?というと
「俺らだって子供扱いだよ」
らしい。

成長の地平に大人と言える日は来るのかどうか、それすら自信がもてないあやふやな感じには覚えがあります。

←みたいな分かり易い大人の評価指標もないわけじゃないけれど、ここで話されているのはそういうことでは全然なくって。

もやしもんは酒と発酵食品と、それがお台所でどう消費されるかという文化までを含む漫画だと思うので、経済活動とか流通とかマネタイズという部分には触れざるを得ません。どうしたってそうなる。

日本酒の銘柄を見たって、どこの蔵で作ったんだか知れたもんじゃないって現実に対しても。


それってただ倫理を捨てて経済の豚になれってことじゃないですかーーやだーーーーーって

西野はそれに猛反発していて忠保他数名もそれに同調するんだけど、僕はちょっと極端な視点だなーと思いながら読みました。
まぁキャンパス漫画ですからね、大学生の視点になってるのが悪いってつもりはありません。でも僕は、いつもそうであるように他の漫画のワンシーンを思い浮かべていたのです。


ハチクロの『青春スーツ』って言い回し。すごい頭に残ったフレーズなんですよ。

ハチクロ真山パートは恋愛漫画なので、青春スーツは概ね『好きな異性の為なら自分が幾ら傷ついても大丈夫』みたいな痛さとして発動するわけですが、
商売の局面で青春スーツ着てると『不正を糺す為ならお酒を○○○○○ても何のその』っていう経済的痛さとして発動するわけでしょ。

○○○○○はネタバレ回避ね。良い子は真似しちゃいけません。

『青春スーツを脱ぐ』行為は大人になることとイコールじゃないし、最近は特に青春真っ盛りのままマネタイズに成功している社会人も増えているように思います。中二病がコンテンツとして流通する位だもん。
ただ、脱いだり着たり迷ったりしながらしか大人にはなれないんだろうなぁ、とハチクロを読みながら思ったんです。野宮さんだって再装着するしね。

だから最近の、妙に達観して諦めちゃって青春スーツの中でぬくぬく決め込んでる自分はすっごい子供だなって恥ずかしいんですよ。
青春スーツ脱がなきゃ!着ていちゃ恥ずかしいんだよ!みたいな居心地の悪さに、もっと僕は苛まれるべきなのです。

だからありがとうもやしもん。(変な結論)







※本投稿中の漫画の画像は『もやしもん』12巻および『ハチミツとクローバー』6巻からの引用であり、著作権は元著作者のものです。

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