今回の語り部は、タイトルにもある通り千石撫子。可愛い可愛い女の子。
本作は、既刊「なでこスネイク」の続きであるかのように展開する。つまり、神社で蛇を殺した事を発端に、蛇の怪異に魅入られてしまう物語のように。 しかし実際には違う。続きというなら「まよいマイマイ」の続きだ。 また本作は、「するがデビル」と似た演出に見える。つまり、これまで阿良々木暦の目を介した三人称だったキャラが、一人称になる事でその本性を暴かれるというように。 しかし実際には違う。敢えていうなら「つばさタイガー」に似ている。 |
もはや恒例のように、ここにも叙述トリックが存在する。否、叙述トリックと呼ぶには可愛い、子供のような目くらましが。“囮”が。
以下、ネタバレ有り。
本作では可愛いという点に絞って掘り下げられているけれど、人の長所も短所も、2つに分類できる。自身の責任で(或いは努力で)獲得したものと、生まれや事故といった「仕方がない」原因で獲得したものと。
千石撫子は変わらない。自分で長所を獲得しようとしない。自分で短所を克服しようとしない。持っている長所も短所もみんな、持って産まれたもの。受動態。理由は、「しんどい」から。
それは確かにしんどい。しんどくない人なんていない。
忍野忍は悩まない。キスショットであった時ならばともかく、今にあっては何が主――阿良々木暦――を突き動かすのか理解しているから。彼女の全てを背負うと決めた主の負担を少しでも減らさんと、彼女は悩む素振りも弱い素振りも見せはしない。
無口キャラを止めたのも、ヘルメットを脱いだのも、そんな理由かも知れない。彼女はまだ語らないが。
阿良々木月火は許さない。停滞を。正体――もちろん彼女は自身の正体を知らないはずだが――とは関係なく彼女自身の性質として、停滞を好まない。髪型をころころと変えるように。昨日と同じ、一昨日とも同じ千石撫子を許しはしない。
ファイヤーシスターズとしての活動を通じて、彼女は本当に「仕方のない」事なんてそうそう無い事を知っているから。みんな努力して、長所を獲得したり短所を克服している事を知っているから。
それでもなお、誰に何を言われたって、しんどいものはしんどい。撫子の罪は色欲ではなく怠慢なのだろう。
下世話な深読みをしよう。
千石撫子は可愛く生まれついた。他に生まれつきの長所はなかった。運動も勉強も余りできなかった。
しかし彼女は、運動や勉強について強く自尊心を傷付けられる機会がなかったのだろう。可愛いから、それだけの理由で許され、同情され、被害者にされてしまったから。詰られ責められ糾弾された事がないのだろう。
そんな機会があれば、きっと歯を食いしばって努力して、自分で動く方法を覚えたのに。そんな機会を奪われてしまったが故に、彼女は今在るようになってしまった。
と、阿良々木くんならこんな同情をするだろうか。
お生憎な事に、撫子は我らがガハラさんの事をよく知らないようなので、予告編はウソ予告に終わるだろう。アレが卒業ごときで諦めておとなしく殺されるタマか。まあその点は、作者も後書きで保証してくれているようなものだし。
『とにかく』、心弱い人間の常として、継続的な努力ができない人間は、短絡的な解決方法を探る。そしてそれに飛びつく。今回の件はそういう事件だった。
相変わらず情報が断片的だけれど、忍野扇とは一体なんなのか?今回の件は撫子が飛びついただけの話で、つまりは扇が引き起こした事件だ。悪意すら感じる。
誰に対しての悪意だろう。暦と忍を亡き者(既にそうとも言えるが)にする為か。或いは、伊豆湖を使って撫子を殺す為か。
いずれにせよ、扇はメメがそうであったようなバランサーではない。むしろ逆なんじゃないか。
そしてバランスが崩されるなら、そこにヒーローとして立ち向かうのはメメじゃなく、阿良々木暦以外にいないのだろう。
以下、ネタバレ有り。
本作では可愛いという点に絞って掘り下げられているけれど、人の長所も短所も、2つに分類できる。自身の責任で(或いは努力で)獲得したものと、生まれや事故といった「仕方がない」原因で獲得したものと。
千石撫子は変わらない。自分で長所を獲得しようとしない。自分で短所を克服しようとしない。持っている長所も短所もみんな、持って産まれたもの。受動態。理由は、「しんどい」から。
それは確かにしんどい。しんどくない人なんていない。
忍野忍は悩まない。キスショットであった時ならばともかく、今にあっては何が主――阿良々木暦――を突き動かすのか理解しているから。彼女の全てを背負うと決めた主の負担を少しでも減らさんと、彼女は悩む素振りも弱い素振りも見せはしない。
無口キャラを止めたのも、ヘルメットを脱いだのも、そんな理由かも知れない。彼女はまだ語らないが。
阿良々木月火は許さない。停滞を。正体――もちろん彼女は自身の正体を知らないはずだが――とは関係なく彼女自身の性質として、停滞を好まない。髪型をころころと変えるように。昨日と同じ、一昨日とも同じ千石撫子を許しはしない。
ファイヤーシスターズとしての活動を通じて、彼女は本当に「仕方のない」事なんてそうそう無い事を知っているから。みんな努力して、長所を獲得したり短所を克服している事を知っているから。
それでもなお、誰に何を言われたって、しんどいものはしんどい。撫子の罪は色欲ではなく怠慢なのだろう。
下世話な深読みをしよう。
千石撫子は可愛く生まれついた。他に生まれつきの長所はなかった。運動も勉強も余りできなかった。
しかし彼女は、運動や勉強について強く自尊心を傷付けられる機会がなかったのだろう。可愛いから、それだけの理由で許され、同情され、被害者にされてしまったから。詰られ責められ糾弾された事がないのだろう。
そんな機会があれば、きっと歯を食いしばって努力して、自分で動く方法を覚えたのに。そんな機会を奪われてしまったが故に、彼女は今在るようになってしまった。
と、阿良々木くんならこんな同情をするだろうか。
お生憎な事に、撫子は我らがガハラさんの事をよく知らないようなので、予告編はウソ予告に終わるだろう。アレが卒業ごときで諦めておとなしく殺されるタマか。まあその点は、作者も後書きで保証してくれているようなものだし。
『とにかく』、心弱い人間の常として、継続的な努力ができない人間は、短絡的な解決方法を探る。そしてそれに飛びつく。今回の件はそういう事件だった。
相変わらず情報が断片的だけれど、忍野扇とは一体なんなのか?今回の件は撫子が飛びついただけの話で、つまりは扇が引き起こした事件だ。悪意すら感じる。
誰に対しての悪意だろう。暦と忍を亡き者(既にそうとも言えるが)にする為か。或いは、伊豆湖を使って撫子を殺す為か。
いずれにせよ、扇はメメがそうであったようなバランサーではない。むしろ逆なんじゃないか。
そしてバランスが崩されるなら、そこにヒーローとして立ち向かうのはメメじゃなく、阿良々木暦以外にいないのだろう。
いやあ撫子ちゃんホントにラスボスになちゃったんですねぇ
返信削除でも物語シリーズは安心感がありますね。阿良々木暦がいるというだけで安心できる。
他の西尾作品では人気キャラがあっさり死ぬ。物語シリーズでは死なない、それを西尾先生は「阿良々木君がそうさせないように頑張ってるから」「誰か死んだら前に進めないキャラ」とおっしゃってましたが、今回も救ってくれると信じてます。
勝敗自体は花物語でもう分かってますしね。
しかし今回のお話は羽川さんが不在なのが利いてますね、彼女がいたら色々変わってた気がします。
コメントありがとうございます。
返信削除そうですねー、人が死なない安心感はありますよね。
問題は阿良々木君が生き残れるか、ではなく撫子を殺さずに済むか?の方ですね。
ホント、どう収集をつけるのか楽しみです。
今回のお話の中では羽川さんが絡んでくる暇がありませんでしたが、解決編(?)では絡んでくるものと期待しています。