正確に言えばメーヴェと全く同じ外見ではありませんし、あんな無茶な操縦もできないと思いますが、少なくとも人一人を載せてちゃんと自力で飛行する、ジェットエンジン搭載の無尾翼機は実在します。
これを生んだ『オープンスカイ・プロジェクト』の主導者でありパイロットともなった八谷和彦氏が、制作に要した10年間を振り返り総括したのが本書です。
10年前って何してたっけなー。そんなことを思いながら読みました。
2003年始動?
本書によると、『オープンスカイ・プロジェクト』が始動したのは2003年です。しかし僕は、それより前、遅くとも2001年の時点でメーヴェを作っていた人達が居たように思うのですが。
っていうか八谷さん達ですよ。当時はもっと直截的に『メーヴェを作ろうプロジェクト』と名乗っていたように記憶しています。
※2001年までと言えるのは、
プロジェクトの名称を変えたのは、恐らくスタジオジブリや宮崎監督に迷惑をかけない為の配慮だろうことは、本書の内容からも察することができます。
当時の懐かしい情報は、まだネットの海に残っていますが、『メーヴェを作ろう』の名前や2001年頃の記事は見当たりませんでした。あれ?記憶違い?
そもそも当時の僕は、ただただメーヴェと空に対する憧れですっげー!すっげー!と騒いでるだけで、八谷氏がポストペットを作った人だということすら、この本を読むまで知りませんでした。無知すぎる。
流行りましたよねーポスペ。流行モノが嫌いな僕は頑としてやりませんでしたが、周りがやっていてぐぬぬした覚えはあります。
しかしメールを運んだきた他人のペットを殴ることができるなんて知りませんでした。殺伐とした世界…!
唐突ですが艦これのメールクライアントとかあったら流行ると思いませんか(提案)
プロジェクト○として
本書の副題は、『発想・制作・離陸――メーヴェが飛ぶまでの10年間』です。
どういった経緯と動機でプロジェクトを起こしたのか、制作上の困難、そして解決と完成の喜び――みたいな。そういう内容はぎっしり詰まっています。
飛行機の仕組みについて、物理的技術的な解説も分かり易く(あさりよしとおさんの解説マンガつき)、日本の飛行機技術の歴史などもとても興味深く、惹かれる内容です。
が、直面する中で最も困難な問題は『金がねぇ』なので、ドラマチックではあっても盛り上がりづらいというか…読んでて気持ちが萎えてゆくような感じはあります。まぁノンフィクションですから、現実ですから、結局はそれ(お金)なんですよねぇ。
自叙伝として
また、八谷氏個人の経歴や成果、人柄なども良く伝わってくる内容でした。
オープンスカイプロジェクト始動の裏にイラク戦争があったなんて全然知りませんでしたし、あの戦争を自身の行動に繋げるなんて当時考えもしなかったことです。
悪夢の3.11、あの時の行動に人格は強く表れると思いますが、八谷さんはあの震災の後、うんちとおならの話をしていました。
いや、冗談ではなく真面目な話でして、覚えてませんか?
Twitter発のこの情報は、トゥギャられ、漫画化され、動画になり、翻訳され、世界中へ伝わりました。その呟き主こそ他ならぬ八谷氏でした。
僕は当時もこのトゥギャを読んでおり、微力ながら拡散などしてましたけれど、相変わらずその発言者を『メーヴェの人=ポスペの人』と結びつけてはいませんでした。
(根本的に『誰が』という部分に興味が薄いんです、ごめんなさい)
…写真集として
最後に白状しますと、僕はこの本を買うにあたって、メーヴェの写真が見たかった、という動機を強く持っていました。青い空を背景に、優雅に舞う真っ白な機体が見たい。
しかしその期待は裏切られます。そも本書は写真集ではありません。上で書いたような内容です。
写真が小さいよ~ |
そもそも本書はそんな期待を担う必要がないのです。
何故ならこのプロジェクトは『オープン』を標榜する通り、ネットに画像や動画を上げています。YouTubeでも『メーヴェ』と検索すれば沢山の動画を観られます。
でもなぁ…紙で観たかったかなぁ。(ぐちぐち)
肩肘張らない頑張り方
何となく新しいことを始めるのに疲れてしまった人には勧めたい本だと思いました。
八谷氏は色々あっても止まらずに少しづつ進んでいくんですが、自分にできないことをやろうとするわけじゃないんですよね。できることだけを着実にやっていくか、できないことは練習して上手くなるとか。
そういう可能なことの積み重ねでも、不可能っぽい未来がカジュアルに実現するんだよという実例ではないでしょうか。
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